本年度は、平成2年度に開発した規則的配列された3次元堤体群まわりの波浪変形の理論解析法および波向き特性を考慮した平面的な波浪制御効果の評価法を用いて、有効な波高並びに波向きの制御効果が得られる沖合消波堤の平面的な配置法を理論的に推定すると共に水理模型実験によりその妥当性を検証した。この際、沖合消波堤としては、直立式の矩形堤体列、潜堤および浮防波堤の3種類を採用した。まず、直立式の矩形堤体列では、波動運動に伴う海浜流の制御を目的に、主に堤体列による透過波および反射波の波向き変化効果に着目して検討を進めた。その結果、矩形堤体を配列軸より8°〜20°の範囲に傾斜させて配置すると、広い周期帯で透過波の主卓越波向きを入射波のそれより変化できることや、透過波の波向き特性を変化させることで結果的に海浜流の流向制御が有効に行えることなどが判明した。また、潜堤列の場合、消波効果の著しい潜堤天端上で砕波する条件下では、波の分裂が生じて透過波の周期特性が入射波のそれとは異なるようになることや、さらにこのような分裂波が堤体の配列条件による入射波とは異なる方向にも伝播するなど非常に複雑な波浪場の形成されることが実験的に見いだされた。一方、浮防波堤列の場合、主に波高制御効果に着目して検討を行った。その結果、現地でよく利用されている直線配列された浮防波堤では、制御対象の作用波の波長が堤体長よりも短くなることが多く、このような条件下では開口部の効果を無視した断面2次元的な解析や実験による波高制御効果に比較してかなり劣るようになることが確認された。そして、浮防波堤列の波高制御効果を改善するためには、配列する浮防波堤の堤体長を波長以下程度のものにするか、波向き方向から見て堤体間の開口部を遮蔽するように堤体を前後にずらして千鳥配置にするとよいことなどが判明した。
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