本年度は、平成3年度に引き続き、規則的配列された沖合消波堤による平面的な波浪変形を、波高および波向きの両特性に着目して、理論および実験の両面から検討した。沖合消波堤としては、透過性防波堤の代表例であるブロック堤および浮防波堤を対象にした。そして今年度は、特に現地でのブロック堤などに見られるような堤体の低反射効果を考慮したときの堤体群まわりの平面的な波高分布や波向きの変化特性などを明らかにした。また、堤体の低反射効果を検討するときに重要となる、波と構造物の干渉過程で生じる波のエネルギー逸散の発生機構やそれを踏まえた波変形の評価モデルについても究明した。まず、断面2次元的なブロック堤を対象にした検討の結果、波のエネルギー逸散は、短周期および中周期の波条件下では主に堤体内の水面付近の部材と波面とのスラミング現象により、長周期の条件下では堤体内での流体抵抗により生じることが判明した。また、浮防波堤のような隅角部を有する堤体では、主に隅角部付近での渦流れの発生等により波のエネルギー逸散が生じることが確認された。そして、このような逸散現象は、堤体周囲の平均流の発生と密接に関係することなども実験的に確認された。一方、このような断面2次元的な検討に引き続き、波の逸散現象による低反射効果を考慮して各種の堤体列まわりの平面的な波変形の特性を検討した。その結果、配列する堤体を低反射構造にすると、堤体列よりの反射波高は効果的に低減できるが、透過波高や透過波の波向き特性はほとんど変化せず、透過波の特性は前年度までの完全反射を想定した結果と大差ないことなどが判明した。しかしながら、堤体列まわりの平均流の特性は、波の逸散現象に関係する渦流れなどの発生により強く影響を受けるため、低反射構造にすると変化することや、従来の波高分布から推定されるような波浪流の算定結果と異なるなどの問題点も指摘された。
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