コンクリ-トの生物腐食は硫酸塩還元細菌による硫化水素生成とその後の硫酸生成の2つの生物反応から成る。本研究ではまず、腐食が著しく進行している下水管内沈殿物の硫化水素生成速度を求めた。その結果有機物濃度が高い表層沈殿物の硫化水素生成速度が著しく高かった。有機酸の添加効果を検討したところ乳酸およびプロピオン酸の添加により硫化水素の生成が著しく促進された。また、一種の有機酸を唯一の炭素源とする培地で硫酸還元細菌数を求めたところ、乳酸またはプロピオン酸を用いた場合多くの細菌が得られた。一方、酢酸を用いた場合、硫化生成促進、コロニ-出現も乳酸、プロピオン酸の場合に比較すれば低かった。これから、下水管内沈殿物中には乳酸、プロピオン酸利用の硫酸塩還元細菌が多く生息し、酢酸を利用する硫酸塩還元細菌はあまり生息していないことが推測できる。 現場での腐食生成物を検討したところ、白色パテ状の柔かい物質でpHは3以下で1以下の場合が多かった。これは多量の硫酸が生成されていることを示している。生成物を電子顕微鏡にて観察したところ、方形の結晶がみられ、X線分散分析を行ったところCdとSはほぼ等モルであり、粉末X線分析の結果、ジプサムのピ-クが現われた。これから腐食生成物はジプサムであることがわかった。現場の腐食生成物からはエトリンガイトは検出されなかった。
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