試料水のpHが陽電荷フィルタ-(ゼ-タプラスフィルタ-)のウイルス吸着能力に及ぼす影響を調べるために、コリファ-ジを含む試験液をろ過して、ろ液中に漏出するファ-ジ量を定量し、フィルタ-の吸着特性の評価を試みた。吸着量は試験液とろ液のファ-ジ濃度差から算出した。供試ファ-ジはT1、QβとMS2の3株と河川から分離したコリファ-ジ1株(未同定)の計4株とした。T1と環境分離ファ-ジでは陽電荷フィルタ-への吸着の程度がpHに大きく依存し、酸性条件では効果的に吸着できたが、pH値が7を超えるとファ-ジ捕集効果は大きく減少した。一方、小型RNAファ-ジのQβとMS2ではフィルタ-への吸着が悪く、pH4ー9の範囲での吸着率は20ー50%程度と低い値を示した。このことは陽電荷フィルタ-ではろ過濃縮過程でウイルスのセレクションが行われることを示唆しており、実用化に当たって今後検討すべき課題の一つと考えられる。 隔膜式等電点電気泳動装置ロトフォアを用いてファ-ジの等電点を求める際の問題点(昨年度)について検討を加えた。供試ファ-ジとして、T1、Qβ及び環境分離株(未同定)の3株を用いた。いずれの株も泳動過程でロトフォアのメンブレンコアに大量に吸着し、液中に残存するファ-ジは1%にも満たなかった。そこで誘出剤を添加してメンブレンコアに吸着したファ-ジを誘出させたところ、大量のファ-ジが回収された。液側に残存したファ-ジの泳動後の濃度分布とコアに吸着したファ-ジの濃度分布には概ねよい一致がみられ、泳動と吸着が並行して生じていることを伺わせる結果となってはいるものの、このような現象は泳動結果の信頼性を著しく損なうものである。従って、この方法では何等かの方法でこの吸着を阻止できなければ、ファ-ジの泳動には不適当と判断された。
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