研究概要 |
昨年度の研究で,ウイルス汚染の指標として優れているといわれる大腸菌ファ-ジを用いて,汚水処理実験を行ったが,処理装置内で用いたファ-ジQβが増殖してしまった。そこで,実験槽から大腸菌の12株を分離し,ファ-ジQβの宿主となるものがあるかを調べ,1株だけがプラ-クを形成しないがファ-ジの宿主となるものであることを確認できた。これの同定を行い,大腸菌であることを確認した。大実菌ファ-ジのウイルス汚染指標性の限界を指摘できた。 腸管系ウイルスそのものを使用するなら宿主細胞が処理槽内で自己増殖することもなく,ウイルスの挙動を明確に把握でき,かつ腸管系ウイルスそのものの使用だから,病原性指標としての価値も高くなることからポリオウイルス1を使用して,接触曝気槽のあるモデル浄化槽によってウイルス除去性能を調べた。 有機物の除去パタ-ンとウイルスのそれとは類似しており,有機物がよく除去されるプロセスではウイルスもよく除去される。嫌気第1槽,嫌気第2槽,接触曝気槽のフロ-全体で,通常の家庭汚水処理の負荷において約99%,負荷が1.5倍に増加しても96%のウイルス除去率が得られた。各処理プロセスの中で接触曝気槽の処理能力が最大であり,単独で91〜95%のウイルス除去能力があることがわかった。 接触曝気槽ではときどきミジンコが発生して処理水が白濁することがあるが,ポリオウイルス濃度は2倍になった程度であり,また曝気が不十分になったときも通常時の約2倍に止まり,少々のトラブルがあっても,接触曝気槽はウイルス除去の能力を相当に安定して維持できることがわかった。 汚水処理システムに接触曝気槽を設けることはウイルス対策上非常に有効であることがわかった。ウイルス評価の前提となる検出法も検討した。
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