研究概要 |
水を通しての公衆衛生の向上にウイルスを視点に入れることが必須であることが認識されるようになってきた。本研究は魚網を用いた接触曝気槽によってウイルス負荷削減することを目的としたが,まず研究逐行の前提であり,安全性の確認および処理効果の確認においては,濃縮の必要な低濃度なウイルスを検出しなければならなくなり,まずウイルス定量のための試料の濃縮方法を検討した。DEAEーセルロ-スにより吸着させ,有機凝集剤でフロック化し,ナイロンメッシュで集める方法を開発し,既存の方法より優れていることを実際の水で証明した。 水処理の最終的衛生保障プロセスである消毒の負担を削減して安全性を高めるための接触曝気法を幅広く適用することをもくろみ,上水道の前処理,排水の再利用などを考慮したBOD低負荷および通常の汚水処理を想定した負荷時の実験をモデル装置で行った。 接触曝気槽は,受動的に接触担体に付着する微生物に依存する処理であり,微生物量の制御は困難であるが,低負荷から高負荷の広い範囲にわたって,有機物が十分に除去される範囲でウイルスも95%以上の高率で除去できることがわかった。負荷が変動したり,曝気が不足したりして処理が不十分になる場合もウイルス除去の変動は有機物濃度の変動より小さく,少々の変動にはウイルス除去の面からは耐えることができた。本研究の成果はポリオウイルスを用いて得られたものであり,腸管系ウイルスの挙動を知るのに価値ある研究である。研究の前段では大腸菌ファ-ジを用いたが,宿主菌が増殖してファ-ジも後追い増殖してしまった。そのためウイルス除去の実態が不明となったが,大腸菌ファ-ジがウイルス汚染の指標として多用されるが,限界があることが示された。 接触曝気後に消毒する場合に,消毒剤を添加したとき十分の攪拌がしにくい構造なら,接触時間に依存すべきことを明にかにした。
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