研究概要 |
段差を認知しない場合の段差の評価方法に関しては,まず第一に歩行速度、履物種類を要因として,平坦な床を人間が歩行する場合の足部の軌跡を測定した結果から,歩行中の足部の最低高さと歩行速度,履物,個人差の関係を考察するとともに,歩行中につまずきを生じない床段差の許容高さとして5mmを提示した。第二に,5mm以上の段差に関しては,高さ,角度,かたさ,すべりの要因を変化させた模擬段差を設定し,これらにつまずく場合の痛さや転倒の危険性を官能検査手法により尺度化し,尺度と模擬段差の諸性状の関係を考察した。さらに,人間のつまずきを再現する足部衝撃モデルを作成し,模擬段差へのモデルの衝突時の衝撃加速度の測定結果の考察から,基本物理量である最大加速度および速度変化量の複合物理量はPI,TIをそれぞれ段差を認知しない場合のつまずき時の痛さおよび転倒危険性の評価指標として提示した。 次に,降りの場合の負担の観点からの段差の評価方法に関しては,まず第一に段差を認知した場合について負担に関する心理学的尺度を構成するとともに人間が床に及ぼす荷重による負担に関する検討を行い,尺度と相関の高い物理量として着地時の平均比荷重を設定した。第二に,段差を認知できない場合については,認知した場合の平均比荷重が着地直前の足部の鉛直方向速度と高い相関があることを明らかにし,この結果を適用して実験により求めた認知できない場合の速度により認知できない場合の平均比荷重および負担を推定し,降りの場合の段差の負担の観点からの評価指標を提示した。
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