本研究の目的は、地下階などの根入れ部を有する抗基礎構造物の合理的な耐震設計法を確立するための基礎的資料を提供することであり、そのために地震力に抵抗する根入れ部(前後面土圧と側面摩擦力)と抗の分担機構を明確にすることに力点を置いている。そこで本研究では、根入れ部の摩擦力と抗頭せん断力を直接計測できる装置を開発し、これらを実物の32分の1の構造物模型(建物階数は6階まで、地下階数は2階まで可変)に取り付けて大型振動砂槽内に設置して定常加振実験を行い、これらと新たに購入された土圧計等の計測デ-タをもとに上部構造物の振動性状と基礎根入れ部に作用する水平力の分担性状の関係が以下のところまで解明された。 1.杭基礎はベタ基礎に比べて基礎底面部の拘束効果が小さく、このため地盤に対して変位量が大きくなり、根入れ部の前後面土圧と側面摩擦力による水平抵抗力の分担率が大きくなる傾向にある。 2.この実験によると3階建の抗基礎構造物では、地下1階程度の根入れ深さがあると杭の分担率は約25〜35%まで低減される。そして、この分担率は根入れ深さをより大きくしてもあまり低減されない。これは、現行の設計指針の最大低減率の値(30%)とほぼ対応している。 3.上部構造物が高層になると水平加振時でも回転成分が多く含まれるようになり、抗には水平力に加えて軸力が作用するようになる。水平抵抗力の分担は、地表面付近の振動土圧が大きくなるために、土圧による分担率が増大し、抗の分担率は低減される。 4.入力加速度が増大すると地盤が塑性域にはいるために根入れ部の土圧による水平抵抗力の分担率が小さくなり、抗の分担力が大きくなる傾向にある。
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