本研究は、低降伏比60キロ級鋼を用いた鉄骨造ラ-メン構造が激震を受ける場合を想定して、その柱梁溶接接合部の耐力、変形性能を実験的に明らかにしようとするものである。本研究では特に、接合部の力学的特性を材料の極低サイクル疲労破壊現象に着目して整理する手法を採用している。 本年度の研究では、柱梁接合部を含む十字型分解架構試験体を合計4体製作し、その梁先端に繰返し漸増荷重を加える実験を実施している。試験体の柱軸力比を0と0.2の2種類に限定し、また、架構の応答特性に大きく影響する仕口パネルの降伏比を適切に設定した、いわゆる弱パネルタイプと強パネルタイプの2種類の試験体について実験を実施している。現在、実験は弱パネルタイプのものが終了し、続いて残りの試験体の加力を行っているところである。 実験結果の整理を待って、得られた成果を公表する予定であるが、現在の時点で明らかになった主な点について以下に述べると、 (1)低降伏比60キロ級鋼を用いた柱梁接合部の力学的特性の一般的な傾向として、従来の50キロ級鋼接合部の力学的特性と比較しても特に大きな遜色はなく、耐震安全上充分な塑性変形能力が期待できそうである。 (2)破壊は梁端フランジ溶接接合部の脆性的破断で決まっているため、本鋼材に対する最適な溶接施工条件と鋼材の化学成分に関するより詳細な検討が今後必要と考えられる。 などである。
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