研究概要 |
鉄筋コンクリ-ト梁の繰返し高応力下での曲げせん断実験を実施し,得られたデ-タの分析を行った。分析の手法は,実験時に計測された外力せん断力およびせん断補強筋応力の値より,コンクリ-トに生じている斜め圧縮力を推定し,この大きさとコンクリ-ト圧縮強度および実現された限界塑性変形量とを関連づけるものである。斜め圧縮応力の推定に用いたせん断抵抗機構モデルは,先に日本建築学会より出版された"鉄筋コンクリ-ト造建物の終局強度型耐電設計指針・同解説(1990)"に採用されている,トラスおよびア-チ機構の重ね合わせ原理に基づいたものである。分析によって得られた結果は以下の通りである。 1)梁部材の塑性変形が増大するにつれて,コンクリ-トに生じている斜め圧縮応力が減少していく。この減少の度合いは初期曲げ降状時梁たわみをδyとし,塑性変形時のたわみをδで表わした時にμ=δ/δyで定義される塑性率に比例することが判明した。 2)塑性変形域での使用限界(鉄筋コンクリ-ト建物が地電荷重を受けた時に梁に許容し得る変形量)を最大耐力時の80%と定義した場合,その時のコンクリ-ト斜め圧縮束応力(この値はコンクリ-ト素材の圧縮強度より小さな値となる)を,梁せん断設計用の有効な圧縮強度とすれば,じん性部材のせん断設計が可能となる。 3)大塑性変形域では,梁クリティカル断面において,フルデップスクラックが発生し,そこでのスライディングせん断破壊を引き起こすことがある。これの防止は,1)および2)で述べた方法では行いえず、別途の検討が必要となる。
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