コンクリ-ト中の鉄筋の腐食には、コンクリ-トのかぶり厚さや水セメント比が大きく影響することが明らかにされているが、ひびわれやコンクリ-トの打込不良箇所の鉄筋と健全部の鉄筋の間で構成されるマクロセル腐食へのそれらの影響については、充分には解明されていない。また、梁のように鉄筋を水平に配置してコンクリ-トを打設した場合、ブリ-ジングによって鉄筋の下面には空隙が生じ、鉄筋の腐食に対して悪影響を与えることが懸念される。 本研究では、かぶり厚さ、水セメント比ならびにコンクリ-トの打込方向の鉄筋のマクロセル腐食に及ぼす影響を調べる目的で、それらの要因の異なるコンクリ-ト中に埋設した丸鋼(アノ-ド想定部分)を、かぶり厚さ、水セメント比の異なるコンクリ-ト中に埋設したステンレスプレ-ト(カソ-ド想定部分)と電気的に接続し、浸漬乾燥繰返し腐食促進試験を行い、腐食電流や電気化学的特性値などを測定し、コンクリ-トの中の鉄筋腐食のメカニズムについて考察した。 得られた結果をまとめると次のようになる。 アノ-ド想定部とカソ-ド想定部間のマクロセル腐食では、(1)アノ-ドのかぶり厚さはC1^ーがコンクリ-ト中に含有されていた本実験の場合でもかぶり厚さが大きい方が、腐食電流は小さい。(2)アノ-ド支配型の腐食のためカソ-ドのかぶり厚さの影響は小さかった。(3)水セメント比は小さい方が腐食電流も小さい。(4)打込方向の影響は大きく、水平打ちの場合、鉛直打ちの場合の約2倍の腐食電流が流れた。 なお、水平打ちの場合には、アノ-ド想定部分とカソ-ド想定部分との間のマクロセル電池の他に、ブリ-ジングによってアノ-ド想定部の丸鋼の下面と上面の間でCl^-の濃淡電池が生じ、かぶり厚さの大きい方がブリ-ジング量も多く、Cl^-の濃淡電池による腐食が著しくなった。
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