温度画像解析(サ-モグラフィ)による建築構造物の非破壊検査手法の精度向上と適用範囲拡大のための基礎研究として、建築材料および部材レベルにおける各種目的の非破壊検査にサ-モグラフィ-応用を試み、適用限度と精度について検討した。本研究で得られた主な成果を要約すれば以下のごとくである。 1.面熱源による表面加熱を行った際の温度画像から、各種材料の板状部材の裏面の半貫通円孔状欠陥、および内部に表面に平行に設けたトンネル状円孔欠陥の2種の欠陥の探知精度を検討し、メタクリル樹脂、石膏、セメントモルタルの各材料について、前者の欠陥については表面から10mm程度の範囲にある径9mm以上のものの、また後者の欠陥については表面から8mm程度の範囲にある径6mm以上のものの検知が可能であることを明らかにした。 2.強制循環高温水による表面加熱法が、温度画像解析によるコンクリ-ト部材内部の鉄筋位置、あるいはこれに準ずる組織の不均一部分の探査のための温度条件付与に有効に用い得ることを明らかにした。 3.上記の方法をコンクリ-ト部材内部の鉄筋位置の検知に応用し、呼び径16mm以下の鉄筋についてはかぶり厚10mm以内のものが、また呼び径19mm以上の鉄筋についてはかぶり厚30mm以内のものが検知出来ることを確認した。 4.等温度に保存したセメントモルタル板の含水率が表面の温度画像に及ぼす影響について検討し、2〜5%程度の低含水率領域ではその影響は認められないが、5〜10%程度の高含水率領域では、含水率の増加に伴なって表面温度が微小ながら低く観測されることを明らかにした。 5.鋼管内に充填した砂試料を外部から加熱した際の温度画像から、単位容積重量で0.2〜0.1kg/l程度の砂の充填密度の相違が、鋼管表面温度の差として検知できることを明らかにした。
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