研究概要 |
筋違材では激震時に引張降伏と全体座屈が繰返し生じる。全体座屈は局部座屈を伴い,この局部座屈の生じた位置で破断に至った災害例も報告されている。この破断は基本的には極低サイクル塑性疲労の現れと思われるが,このような局部座屈に誘発される破断に関する研究は極めて乏しい現状にある。なお,我々は,この破断を座屈後破断と呼ぶことにした。 この現象の力学的究明を目的に二つの実験を行った。 〔実験I〕筋違材の座屈後破断の現象を曲げ実験による局部座屈位置での交番塑性疲労とシュミレートし,角形鋼管柱の繰返し曲げ実験を行った。試験体は応力焼鈍を施したSTKR400,□-250×150×8から成る片持ち柱で,載荷経路を実験変数とする5体である。この実験では,1/100精度のノギスを用いて,破断に至る局部座屈発生位置のひずみの計測を丹念に行った。 〔実験II〕破断した位置での応力履歴を得るために,この位置で計測したひずみ履歴で制御する素材の引張・圧縮繰返し実験を行った。実験にはインストロン型変位制御試験機を用いた。なお,この実験は,既成の応力-ひずみ特性の数式モデルが破断近傍までを正確に表現できないことから行われた。 実験IIで得られた応力-ひずみ曲線は,実験Iの破断箇所での応力-ひずみ曲線そのものと考えられるので,この曲線から吸収エネルギーを算出したところ,素材の持つ限界に達していることが判明した。 一連の実験の結果,局部座屈に伴う破断現象は,有効断面の減少と塑性疲労によるものとの結論を得た。
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