本研究では、浮き上がりを考慮した構造物の振動性状と地震応答について、3層構造の試験体を製作し、実験(自由振動、正弦波入力、および地震応答)を行い、その実相を把握すると同時にシミュレ-ション解析を行った。これまでに研究で得られた知見を以下に示す。 1.自由振動実験では、加速度、変位の時刻歴波形を実測し、浮き上がり状態から、ロッキング振動状態に移行する過程を詳細に追跡した。特に、浮き上がり振動時の周期が変調して、次第にロッキング周期に収斂すること、浮き上がり振動時に大きな減衰性を有することが注目される。 2.正弦波入力実験では、応答加速度の共振曲線、およびその変形モ-ドを中心に検討した。入力加速度を増大して、浮き上がり状態に達すると、応答加速度倍率は急激に低下し、浮き上がりによる非線形性が顕著に表れた。また、変形モ-ドに関しては、浮き上がり時に急激に増大する変位が、特に1次モ-ドの成分に依存している。 3.地振動入力実験では、硬質地盤を代表するEl Centro NS(1940:Imperial地震)、および長周期成分の卓越する東北大学NS(1978:宮城県沖地震)、の2波を中心に検討した。予想通り、各応答値は、東北大学波が若干大きめの値を示したが、地震応答の全体的な傾向は類似したものとなった。El Centro波の実録加速度値(342gal)で、浮き上がりは顕著に表れる。この浮き上ガりの現象により、加速度振幅は頭打ちとなり、応答倍率は低下し、強い非線形性が認められた。なお、上下動による影響を東北大学波で検討したが、特に明確な差異は認められなかった。
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