建物の寿命の中で各システムは更新を繰の返す。そして、最終的には建物自体の更新時期を迎える。通常、機械系システムの劣化状況はバスタブ曲線と言われ、初期故障期間、偶発故障期間を過ぎ、摩耗故障期間に入りやがて全面更新へし至る。それらの考え方に基づき、建物の全面更新までの期間も保証期間、定常保全期間、更新影響期間の三期に分けられる。そして、更新影響期間において保全費用も加速的に増大すると考えられる。これから更新影響期間の算定方法を提案し、更新影響指標値をもとに更新に至るまでのメカニズムを明確した。 1938年竣工し1990全面更新(建替え)に至った建物を調査した。その建物の保全費用による機能劣化曲線をもとに更新影響期間を算定した。更新影響期間は10年であった。その傾向は社会的劣化においてより強くまた早い時期(更新前11年)から始まっていた。また、更新影響期間(10年間)の保全費用総額は全期間(39年間)の費用総額の42.6%であり、期間的には25.6%にすぎなかった。つまり、更新影響期間における保全費用の加速的増大の影響の大きさが分かる。また、全期間を通じて社会的要因による影響が物理的要因による影響を上回り、更新影響期間ではさらにこの傾向は強まり、社会的要因が物理的要因より影響が大きかった。 社会的要因の中で最も大きな影響を与えたものは「業務活動における人の増減・移動に関する変化」であった。次いで「業務活動における物の新設・増減・移動に関する変化」、「業務活動における人の活動意識の変化」でああた。また、部位の中で更新に影響のあったものは内部仕上げであった。以下電灯設備、空気調和設備、電話外部仕上げ、輸送設備、受変電設備の順であった。
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