研削屑中に含まれるイットリウム・アルミニウム・ガ-ネット(YAG)およびニオブ酸リチウム(LN)をドデシルアミン酢酸塩(DAA)を捕収剤とした浮選により研磨剤であるグリ-ンカ-ボランダム(GC)から分離することの可能性について検討した。得られた結果は以下のとおりである。 1.硝酸カリウムを含む溶液中で測定されたYAGおよびLNの等電点はそれぞれpH7.5および2.8である。 2.YAGの浮遊性は表面が負に荷電しているアルカリ性で高く、正に荷電している酸性で低く、DAAによるYAG表面の疎水化はDAAの静電的吸着によるものと解釈される。 3.硫酸、蓚酸イオンが存在するとき、YAGの浮遊性は強酸性領域でも高くなる。これはこれら多価陰イオンのYAG表面への特異吸着に起因する。蓚酸イオンの場合は、YAGのゼ-タ電位を正から負に逆転させ、DAAとの静電的作用により、硫酸イオンの場合は特異吸着した硫酸イオンとDAAの化学的相互作用によりDAAの吸着量を増加させるためである。 4.硫酸あるいは蓚酸でpHを2以下にし、とうもろこし澱粉によってGCの浮遊を抑制すると、YAGを選択的に浮選分離することができる。この場合、硫酸よりも蓚酸の方が分離性が良好である。 5.LNの浮遊性は中性ないしアルカリ性pH領域で高く、強酸性pH領域で急激に低下する。LNは多価陰イオンによって活性化されないが、弗化物イオンによって活性化され、強酸性pH領域でも高い浮遊率が得られる。 6.LNの活性剤として弗化カリウム、GCの抑制剤としてとうもろこし澱粉を用いると、pH2〜4の範囲でLNとGCの浮選分離が行なわれる。
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