1.緒言 現在、地球規模の環境問題として酸性雨や炭酸ガスの増加に伴う気温の上昇が挙げられる。これらは互いに独立した問題ではなく、たとえば、酸性化した陸水により地球上に大量に存在する方解石などの炭酸塩鉱物が溶解し、大気中の炭酸ガス濃度を増加させている可能性がある。そこで本研究では、今後の炭酸ガス濃度を予測するうえで重要な、酸性雨pH領域における炭酸塩の溶解(pHフリ-ドリフト法)を定量的に評価することを目的とする。 2.実験 初期pH値を4に設定し所定粒径の方解石を溶解させ、その際のCa^<2+>濃度、pH値の経時変化を測定した。なお、実験条件は以下の通り。温度10℃ー40℃、撹拌速度500rpm(500cm^3ビ-カ-使用)。また、実験は窒素ガスを連続的に流す(流量250cm^3/min)ことにより実験雰囲気のCO_2分圧をほぼ0に設定した場合および大気に開放な状態に設定した場合について、方解石を溶解させた。 3.数学モデルの作成 方解石と溶液の反応、炭酸の逐次酸解離、溶液中のCO_2濃度とCO_2分圧の差、共存イオンを考慮した速度モデルを作成した。 4.結言 実験結果より得られた溶解速度と水素イオン濃度の関係を調べたところ、以下のことがわかった。(1)方解石の溶解速度は、pH4.5以下の範囲では水素イオン濃度の2次に依存し、pH4.5以上の範囲では水素イオン濃度の0次である。(2)pH4.5以上の範囲では、大気に開放な状態に設定した場合の溶解速度はCO_2分圧をほぼ0に設定した場合のそれに比べて大きい。
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