研究概要 |
秋吉台石灰岩の希塩酸溶液における溶解について検討した。測定項目はカルシウムイオン濃度およびpHの経時変化で、実験条件として初期pH、温度および攪はん数を様々変化させた。その結果初期の溶解速度は攪はん数の増加に従い大きくなり、アレニウスプロットより初期pHが4のときは活性化エネルギ-が15kJ/mol,初期pHが5のときは25kJ/molであった。以上の結果をもとに本研究では弱酸性域における方解石の溶解について、特にレオロジ-の観点から次のように考察する。 水の粘性率は温度に依存し、その値は本研究における温度域である5℃および40℃では約2倍ほど異なる。よって回転数は溶液の流動状態を適当に表わしているとはいえない。そこでRes=pd^2n/μで定義される攪はんレイノルズ数を用いて、溶解速度と攪はんとの関係を整理する。ここでpは水の密度、dは代表長さ(攪はん羽根の回転直径)、nは回転数、μは水の粘性率である。その結果Res=7×10^4における初期pH4の初期溶解速度はごくわずかな温度依存性が認められるにすぎず、活性化エネルギ-は1kJ/molであった。この温度依存性の欠如は、方解石の溶解反応速度が境膜内の化学種の拡散速度より著しく大きいことを示唆している。また、同様に初期pH5の場合について活性化エネルギ-を求めたところ312kJ/molを得た。これらの値はともにResを用いない場合よりも小さな値である。従来の研究において提案された活性化エネルギ-はいずれも溶液の粘性の温度依存性を無視しているがゆえに大きい結果を得ているといえる。また、初期pH5の活性化エネルギ-が初期pH4に比して大きいことから、pH5においては律速段階は化学種の拡散過程が支配的であるが,pH4よりも反応過程の影響を受けていることがわった。
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