研究概要 |
1.ニッケル基希薄合金中の水素による緩和 Niー2at%Ti多結晶試料を用いた低周波内部摩擦および磁気余効測定により,TiーH複合体の再配向に起因すると考えられる緩和ピ-クの活性化パラメタを求めた.得られた活性化エネルギ-は0.33eV,頻度因子は(2ー5)×10^<11>s^<ー1>である.単結晶作製は,坩堝と試料が反応しやすく困難をきわめたが,ソフトモ-ルド法により数本の単結晶試料を得ることができた.これらの試料に水素をチャ-ジしたのち,ねじり振動による内部摩擦測定を行なったところ,多結晶と同一の緩和ピ-クが見出された.緩和強度の方位依存性を調べたところ,“H原子はTi原子の最近接四面体位置に捕捉されており,このTiーH対の再配向が緩和の原因である"というこれまでの解釈からの予想に反する結果が得られた.また,この緩和ピ-クは外部磁場によって消失することが見出された.観測された方位依存性は,水素原子が八面体位置に存在することを示唆しているが,これはこれまで知られている様々の実験事実に照らしてみると考え難い.むしろ,この緩和の擬弾性歪はTiーH対の周囲のdipolar strainではなく,磁歪によるものと解釈するのが妥当と考えられる.可能な機構の一つは,外部応力(内部摩擦実験の場合)または外部磁場(磁気余効実験の場合)によって,磁壁がTiーH対の再配向を伴いながら移動する,というものである. 2.Ni_3Fe規則ー不規則合金中の水素による緩和 希薄合金の場合と同様な実験を標記合金試料について行なったところ,結晶方位依存性,外部磁場依存性などについて全く同様な傾向を示した.この合金も磁歪の値は異なるが容易磁化方向はNiと同じく<111>であり,磁歪の対称性から希薄合金の場合と同じ緩和機構を考えることができる.
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