研究概要 |
気相からダイヤモンドを合成する方法は数多く提案されているが,それぞれの方法には長所と短所がある.本研究では比較的容易に,かつ効率的に良質なダイヤモンド膜を合成できる熱フィラメント一直流プラズマ複合CVD装置を製作した.この装置を用いて種々の実験条件でSi基板上にダイヤモンドを合成した.合成ダイヤモンドは膜は走査電子顕微鏡と透過電子顕微鏡でその形状・表面状態や内部組織を観察した.各合成条件で基板上に堆積した物質がダイヤモンドであることは電子線回折で確認した. メタンガス濃度が1%の合成条件では自形のよく発達したダイヤモンド粒子が多数堆積した.それらの形状はその表面が{100}面と{111}面で構成された十二面体およびその双晶粒子,五回対称を持つ多重双晶粒子などである.メタンガス濃度を2%に上昇させると,合成されたダイヤモンド粒子は明確な自形を持たず,その表面が凸凹したボール状の粒子が基板上に成長する.3%のメタンガス濃度では堆積速度が極端に早くなるが,堆積物の表面の凸凹は深くなり多数の針状の突起が認められた. 自形のよく発達したダイヤモンドの{100}面と{111}面の平滑度に明白な差異が存在する.{100}面の表面は例外なく平滑であるが,{111}面はざらざらした表面が多くその平滑度は{100}面に比べると劣る.内部組織を観察すると多数の積層欠陥が観察される.一方,多くのボール状ダイヤモンドの一部にテラス状の平坦な部分が認められた.テラスの形状は様々であるが,それらが発達すると台形の側面を持つ立体になる.しかし,側面の平滑度はテラス表面のそれと比べると一般に良好とはいえない.この様に気相合成されたダイヤモンド粒子の結晶表面の平滑度に差異が存在する事実はその結晶成長機構を解明する上で重要な手がかりである.
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