研究概要 |
層状構造をもつ金属間化合物中には,成分の微妙な変化や熱処理条件のちがいにより,多形を示すものがいくつか知られている。 代表者らはこれ迄,Mg系三元合金ラ-ベス相やSmーCo,SmーNi合金系における多形について研究を行ってきたが,これらの合金中には多形と共に,はげしく乱れた積層不整を示すものが多く観察された。ラ-ベス相合金系における電子濃度と多形の関係については,相互作用ポテンシャルを仮定してBruinsmaとZangwillが悪魔の階段理論で解析をした。 代表者らはさらにラ-ベス相合金系における積層不整について,高分解能電顕格子像から積層の順序を読みとり,これからこの合金系の積層の特徴を詳しく調べた。その結果,層間の相関関数は200層以上にわたって振動しながら減衰せず続いており,極めて長距離の相関があることが判った。 またこの合金系のはげしく積層の乱れた領域からのX線散漫散乱を,一次元不整格子に関する柿木・小村の理論にもとづいて,2Hー9R,4Hー9Rー10H構造間の積層不整として解析して,定性的に観測強度分布を説明できた。しかしこの散漫散乱は,極めて平行度のよい電子線による電子回折では微小な斑点列となっており,電顕格子像によるミクロな積層順序と密接に関連していることを示している。この結果は1990年夏ボルド一市における第15回国際結晶学会議において報告した。 本年度はこの他に,金属微粉末を原料とし,ボ-ルミルやアトライタ-を使った機械的合金化により作成した合金の構造や不整を研究する目的でCuーNi 固溶体合金の作成を試みた。
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