研究概要 |
本研究の目的は、優れた機能性によりハイテク時代を支える新材料の希土類金属を製造する際の電解浴として用いられる塩化物系溶融塩の物理化学的性質を明らかにし、希土類金属のより効率的な製造に資する事である。 平成3年度においては、主として希土類金属塩化物系溶融塩の電導度の測定を交流ブリッヂ法を用いて行なった。ここでは希土類塩化物として代表的な塩であるLaCL_3を、またアルカリ金属塩化物としてはLiCl,NaCl,KCl,CsClを選び、これらの2成分系混合溶融塩について測定を行なった。測定に当っては電導度の高い溶融塩系に適するように特に設計された石英製の電導度セルを用いた。 LaCl_3は3価の塩化物であり3価の場合にはAICl_3の場合に典型的なように電導度の極端に低いものが多い。しかしLaCl_3の場合にはかなり高い。これはLa^<3+>イオンがAl^<3+>イオン等より大きなイオン半径を有し、イオン性が強いためと考えられる。アルカリ金属塩化物の電導度はLiCl,NaCl,KCl,CsClの順で小さくなり、LaCl_3の電導度はCsClのそれと同程度である。しかしLaCl_3をアルカリ金属塩化物と混合する電導度は低下する。また密度の測定値を用いて計算した当量電導度の比較ではアルカリ金属塩化物がLiCl,NaCl,KCl,CsClの順に低下が著しい。 前年度のモル体積に関する検討より、これらの混合溶融塩中には新たな錯イオン種が生成すると考えられ、ここで得られた電導挙動も錯イオン種の生成を示していると考えられる。即ち、錯イオン種は単イオンより大きくて移動が遅いために当量電導度の低下をもたらし、その順もアルカリ金属イオンの半径に一致すると考えられる。 以上の様に、希土類金属電解浴に関して基本的かつ重要である電導度を正確に測定して、昨年度までの密度の研究結果と併せ、構成イオン種およびその性質についての新たな知見を得た。
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