研究概要 |
溶融金属中に懸濁する介在物は,金属材料の欠陥となり様々の重大な問題を惹き起こすことが知られている。本研究ではこの介在物の有効な除去法を検討するために,流体力学的立場から介在物挙動に関する基礎的研究を行うことを目的とした。本年度は常温の水ー粒子系を対象として,以下のような実験的研究および理論的検討を行った。 1.円管内水流中の固体粒子の泳動 (1)実験的研究:内径2および3.3cmの2種の垂直ガラス円管内に所定流速の水を上昇または下降させ,管入口より介在物を模擬した低密度の中空ガラス粒子(密度0.46g/cm^3,粒子径75〜120μm)を注入し,下流における壁付着効率ηを実測した。ηは下降流の場合には常に0であり,粒子の泳動は壁から管軸に向いて起きることが示された。一方,上昇流では壁付着傾向が明確に認められ,ηは液流速,粒子径,管径および液粘度で複雑に変化した。 (2)理論的研究:ηと諸因子との関係を既往の流体力学的泳動理論と軌道理論とを組み合わせて求めた計算値と比較した。その結果,ηは粒子の回転による泳動力を考慮した理論と流体の慣性効果による泳動力を考慮した理論との中間に位置し,本実験系の粒子泳動には両者の機構を考慮する必要があることが示された。ηの実測値に基づいて泳動の理論を修正し,泳動速度の半理論式を導出した。 2.種々の流れ系における固体粒子の移動 縮流や衝突流などの実プロセスに現れる流れ系における粒子挙動を理論的に評価し得る手法を開発中である。 3.攪拌下の微小粒子の凝集速度 酸化鉄粒子の粒径分布をコ-ルタ-カウンタ-と光学顕微鏡とを併用して測定,比較し,コ-ルタ-カウンタ-の特性を評価・検討中である。
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