溶融金属中に含まれる介在物は流れ場で凝集・肥大化し、その一部が製品に残留すると、線材のきずなどの重要な問題を惹きおこす。本研究ではこの介在物の有効な除去法を検討するために、流体力学的立場から介在物挙動に関する基礎的研究を行うことを目的とした。平成3年度は以下のような研究を行った。 1.円管内流動水中の中空ガラス粒子の泳動 垂直円管内に中空ガラス粒子(55〜135μm)を懸濁した水を鉛直上方に流し、粒子が壁に集まる効率(壁付着効率)ηを測定した。平成3年度は平成2年度より広範な条件下で実験を行った。ηに及ぼす粒子径、液流速、円管内径および液の粘度の影響を表すための無次元相関式の導出を試みた。すなわち、流体の慣性効果を表す無次元パラメタ-βを既往の理論式に導入し、ηの実測値からβの値を求めた。このβは管レイノルズ数および粒子レイノルズ数で良く相関されることが示され、βに関する実験式が求められた。この実験式より、溶鋼中アルミナ粒子の場合について、壁付着に関する諸因子の影響が定量的に評価され、壁付着による除去法に有効性が検討された。 2.撹拌下の微小粒子の凝集速度 撹拌槽を用いてポリスチレン・ラテックス(PSL)(2.95μm)およびアルミナ粒子(4.85μm)の水溶液中での乱流凝集速度を測定した。PSL粒子については電気二重層効果のない、いわゆる急凝集の条件が成り立つことが確認され、また凝集速度が既往の理論で表されることが示された。一方アルミナ粒子については凝集速度は溶液のpHによってことなり、その凝集速度は既往の理論では表せなかった。今後、より微小粒子を用いた実験よび粒子間ポテンンシャルなどに関する理論的考察が是非必要である。
|