研究概要 |
熱伝達,物質移動,介在物の挙動といった冶金流動現象を知るうえで,流速は重要なパラメ-タであるが,高温溶融金属を対象とした流速計は見あたらない.本研究では,球の抵抗を利用した溶融金属にも適用可能な流速計を新たに開発し,まずコ-ルドモデルに適用しその妥当性を検証した. 平均流速uの流れ場に置かれた直径Dの球に働く平均抵抗F_Dは抵抗係数C_Dの関数として表されるので,あらかじめC_Dが与えられていればF_Dよりuを求めることができる.主流中の乱れ強さTuがきわめて小さな場合には,レイノルズ数Reの関数として標準抵抗係数C_<DS>が明らかにされているが,実操業における溶鋼浴内のような非常に乱れた場のC_Dは明らかでない.そこで,乱れの効果を,乱れ強さと乱れの相対的スケ-ルに着目して調べたうえで,F^^ー_Dを測定してu^^ーを求め,熱線風速計,レ-ザ-ドップラ-流速計(LDV)による測定結果と比較した.なお測定は空気噴流,水噴流,水ー空気系気泡噴流,水銀ー空気系気泡噴流の中心軸上で行った. 球の抵抗係数C_Dに対しては乱れの相対的スケ-ルの影響はみられず,レイノルズ数Reと乱れ強さTuで整理できた.Tuの増加にともないC_Dはより小さなReから標準抵抗係数C_<DS>からずれて減少しはじめるが,それより小さなReではTuの影響を受けないことがわかった.この範囲で流速を測定すると,空気噴流では±5%,水噴流では±10%の誤差内で測定可能であった.水ー空気系気泡噴流中のガスホ-ルドアップαが数%の領域に対して流速を求めたところLDVの測定結果と比較的よく一致した.水銀ー空気系気泡噴流の測定位置でのαは10数%の値をとるが,求められた流速は空気ー水銀系気泡噴流の気泡上昇速度の結果から判断してもほぼ妥当な値と考えられる.
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