溶融還元に石炭を直接使用できるようにすることを目的に、次の2つの実験をおこなった。 (1)溶融酸化鉄と石炭の高温での反応をX線透過法で直接観察し、その反応挙動をモデオにおさめた。 (2)還元の際に発生するガスおよび還元にともなう酸化物組成の変化を調べた。 以上より次のことが明かとなった。 1)石炭中の揮発分は石炭が溶融スラグに投入された直後から活発に発生する。 (2)揮発分の主成分はメタンと水素である。 (3)ガス分析から求めた還元率とスラグ分析から求めた還元率は、ほぼ一致した。 (4)石炭による還元の際の還元速度は、チャ-あるいは黒鉛によるそれよりも大きかった。 (5)黒鉛およびチャ-による還元速度はほとんど同じ値であった。 (6)これら還元反応速度は還元率に対し見掛け上一次反応速度式として整理できる。 (7)見掛けの反応速度定数の温度依存性はアレニウスの式に従い、その見掛けの活性エネルギ-はチャ-と黒鉛の場合には約35kcal/mol、石炭の場合には約15kcal/molであった。 以上の結果より、石炭中の揮発分は溶融還元にとって有利に働くことが明かとなった。
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