前年度において制作したビスカス・フィンガ-・デンドライト凝固実験装置に、圧力測定装置を付加することにより、デンドライト先端近傍の圧力を測定できるよう改良した。本装置により一方向凝固実験測定を行い、先端成長速度と圧力差(先端の無限遠)の関係、先端曲率半径と圧力差の関係が求められた。 上記の関係は、合金の過冷却凝固における過冷度とデンドライト先端成長速度、先端曲率半径の関係と比較検討され、ビスカス・フィンガ-・デンドライトの特性を明らかにすることができた。これにより、ビスカス・フィンガ-・デンドライトは形状が大きく、また成長の制御が容易なことより、デンドライトの微細構造を解明するのに適した有利なモデルであることが判明した。更に、一方向凝固に対応して、二次ア-ムのコアソニング、二次ア-ム間の相互作用現象も存在することが確認され、広い適用範囲があることも示された。 デンドライトの成長機構に関する理論的研究も同時に展開された。デンドライトのミクロ偏析のような微細機構解明のためには、凝固条件の異なる過冷却凝固と一方向凝固、界面形態として異なる平らな界面での凝固とデンドライト凝固を同一の理論形式で取り扱えることが重要である。現在までに提案されている凝固理論はいずれもあるひとつの凝固条件、凝固界面形態に関する理論であった。今年度の研究において、異なる凝固条件、異なる界面形態の凝固においても、統一的な理論形式による取り扱いが可能である理論が見いだされた。 この理論は曲率差による界面上のドライビングを考慮した新しい理論であり、過冷却凝固と一方向凝固におけるデンドライト界面の先端曲率半径、先端成長速度、平らな界面の安定成長条件の適切な予測がなされることが示された。
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