Tiー6Alー4V合金の高速熱延急冷実験を行い、組織及び集合組織に及ぼす圧延温度、潤滑条件の影響を明らかにした。Tiー6Alー4Vの高速熱延では、油潤滑、水潤滑とも表面直下にせん断変形の集中する層が生じたが、せん断歪は水潤滑の方が大きかった。また、せん断歪は圧下率及び圧延温度にも強く依存し、圧下率が大きいほど、また温度が高いほどせん断変形は大きくなった。α+β相域で圧延すると、強いせん断変形が加わる部分ではα相が再結晶し、平均粒径1〜2μmの微細な等軸状組織を生じる。焼鈍するとさらに再結晶が進行して広い範囲で微細な等軸組織が現れる。このときの粒径は急冷材より大きくなり、約3μmであった。β単相域では、強せん断部に再結晶により微細化したβ相からの変態による微細なマルテンサイトを生じるが、これは焼鈍を行っても等軸組織にはならない。また、この部分の硬さは周囲の組織と比べて顕著な差はなかった。板厚中心部の組織は、すべて層状組織であった。Tiー6Alー4V合金の強せん断層のα相の集合組織は、β域圧延ではbccであるβ相のせん断集合組織{110}<001>(Goss方位)からBurgersの関係で変態した集合組織のみが生じた。α+β域圧域では、βせん断集合組織から変態した集合組織とα相のせん断集合組織(<0001>||ND)の2種の優先方位が主成分であった。しかし、これらの集養度はβ域圧延に比べてかなり低かった。焼鈍するとこの部の集合組織は集積度が若干増加し、かつT方位(<0001>||TD)成分が増加した。このことから、α+β相域で大きなせん断変形を与えるように加工すれば、微細な等軸組織を持ち、かつ顕著な集合組織を示さない材料が得られる可能性があることがわかった。
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