研究概要 |
近年,Ti合金は生体との親和性が良好なことから生体材料としてその用途を拡大しようとしている。なかでもTiー6Alー4V合金が注目されているが,バナジウム(V)に毒性のある可能性があり,これに代るTi系合金の開発が切望されている。構造用金属材料として、筆者らがこれまで検討してきたTiーFe系焼結合金は生体に対してきわめて安全な2元素から成り立っており,生体材料にも適した材料と考えられる。以上の様なことを踏まえた上で,生体材料としての応用を目指して,本Piー4Fe合金の腐蝕特性を現在すでに生体材料として実用化されているTiー6Alー4V合金および生体材料として新たに開発され,注目されているTiー5Alー2.5Fe合金との比較のもとに分極曲線を求めることにより検討した。その結果,INーHCl中および生理食塩水中においても試験条件を厳しくすると,Alを含有するTiー6Alー4VおよびTiー5Alー2.5Fe試料では局部腐蝕を呈するのに対し,Tiー4Fe試料では研磨きずのある活性な部分でもまったく腐蝕されずきわめて耐蝕性が高いことが確かめられた.また不動態皮膜中における組織分析を行なった結果,Tiー6Alー4VおよびTiー5Alー2.5Fe試料では,皮膜中のAl濃度がともにかなり高くなっていることが確かめられた.これに対し,Tiー4Fe試料では不動態皮膜中での組成はマトリックスの組成とほとんど変わっていないことが明らかになった。従来、Tiー6Alー4V合金はTi合金の中でもきわめて耐蝕性の良好な合金であるが、それより一段と耐蝕性が高いと言うことで,現在,その方面での専門家との協力のもとに,その要因について検討している。また、医師らとの協力のもとに家兎にTiー4Fe試料を移植固定したところ,きわめて良好な生体親和性を示すことが確かめられた。これらの結果については粉体および粉末冶金あるいは日本バイオマテリアル学会に発表している.
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