研究概要 |
近年、チタンが良好な生体材料として脚光を浴びているが、通常の製造法によりチタン合金を得る場合には難鋳造性および難加工性が大きな問題となっている。上記のような問題点を克服すべくNear-Net-Shape加工法が種々検討され、なかでも粉末冶金が取り上げられ、最近では熱間静水圧プレス(HIP)処理を施すことにより容易に高密度化出来ることもあいまって大いに注目されている。一方、生体材料用チタン合金として、現在すでにTi-6Al-4V合金が使用されているが、Vに毒性があることが指摘され、これに代わるチタン合金の開発が切望されている。筆者らがこれまでに取り扱ってきた焼結Ti-4mass%Co(以下、Ti-4Coと記す。)およびTi-4mass%Fe(以下、Ti-4Feと記す。)をβ溶体化処理の後、(α十β)-Quenchingの熱処理を施すことによりきわめて良好な機械的性質を示すことを明らかにしてきた。そしてこれらのチタン合金の添加元素であるCo,Feは現在生体材料として使用されているVitalliumあるいはSUS316Lの主成分である。したがって、チタンにそれら元素を添加Ti-4Co,Ti-Fe合金は生体に対しても安全であることが期待される。以上のようなことを踏まえた上で本合金の腐食特性を、Ti-6Al-4V合金および最近生体材料として開発されたTi-2.5Fe-5Al合金との比較のもとに検討した結果、生理食塩水中においてAlを含む上記の2合金は局部腐食を呈したのに対しTi-4FeおよびTi-4Coではほとんど腐食されないことが確かめられた。また実際に家兎のけい骨に本系合金を移植固定して生体親和性を検討したところ、きわめて良好な結果を示した。
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