研究概要 |
材料の微視的表面形状は機能材料を除いては高度に制御されることは少なく、いまだにその利用の可能性が潜在したままにおかれている.塑性加工により材料に制御された表面形状を付与し,その特性の評価と利用可能性を検討するのが本研究の目的である。 利用の一例として前年度に引き続き制御された微視的表面凹凸を有する銅板のトライボロジ-特性を検討した.(なおこの銅板には直接フォトエッチングで微細表面形状を与えた.)試作した小型摩擦試験機により球形圧子と試験板との摩擦係数の角度依存性を含めた測定が可能である.(比較的等方的な)正方形のピットを与えたシリ-ズでは低粘度油の場合に潤滑剤の貯蔵場所としてピットの効果が著しく発揮されるが,ピットの面積比率では60%程度のときにも最も効果が高かった.また棒状の方向性があるピットを分散させたパタ-ンでは、基本的には等方的なピットパタ-ンと基的的には同様な効果が得られたが,摩擦試験機の圧子との接触長がピットの長さの2〜4倍程度である条件から,長手方向でも直角方向でも有効な高圧化した潤滑剤の効果は等方的なパタ-ンよりやや小さかった.これはSEM観察によればピットの変形状態と潤滑剤の封じ込め以前の流出現象により効釈できた. 一方,塑性加工による微細表面形状の付与に関する検討は超硬合金工具にエッチングを応用した技術により直径30μm,深さ20μm程度の円形穴,あるいは円錐台型の突起を刑成することを可能とする技術を検討した.ウエットエッチングとドライエッチング(イオンビ-ム・エッチング)を組み合わせることにより,塑性加工用金型として適当な深さ方向の勾配もつ微細形状(深さ20μm)を与える方法を見いだした.ただし現状では平面内では100μm〜200μmの寸法のパタ-ンにとどまっているので,今後その微細化を可能とするよう検討を進める予定である.
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