電子デバイスの高集積化のためには、スパッタリング法やCVD法などによって各種の化合物薄膜を形成する際、その性状を数μmオ-ダ-の微小領域単位で自在に制御する技術が必要とされる。本研究では、直径数μmの微小領域の薄膜の解析が可能な高分解能マイクロエリプソメ-タを作製し、これを用いてCVD化合物薄膜の厚さと複素屈折率の析出時間依存性および場所的分布を解析することを目的とした。得られた成果は以下の通りである。 1.装置の作製:まず、手動消光点方式のエリプソメ-タに偏光反射像拡大用の光学系を取付けた構造のマイクロエリプソメ-タを作製し、通常のマクロ測定に加えて直径3μmまでの微小領域の測定が可能であることを確認した。次に、成膜中のその場測定を可能にするため回転アナライザ-型自動エリプソメ-タへの改良を行った。 2.MOCVD酸化物薄膜成長過程の解析:作製した装置を用いてMOCVDによるTiO_2、Ta_2O_5、SiO_2、Al_2O_3、およびZrO_2薄膜の厚さと複素屈折率の析出時間による変化を測定し、エリプソメトリ-解析がCVD化合物薄膜の性状を解析するための手段として有効であることを明らかにした。 3.プラズマCVD化合物薄膜の性状の場所的変化の解析:Pt基板上に形成したBN、TiNおよびSiO_2薄膜の膜厚の場所的分布状態を解析した。どの皮膜においても、膜厚は±20%の範囲内で場所的に変化していることが分かった。 4.複探針法によるプラズマ状態の場所的変化の解析:プラズマCVD中のプラズマの電子温度および電子密度を測定した結果、これらは試料の大きさ(長さ25mm、幅15mm)の範囲内ではほとんど変化しないことが分かった。 5.プラズマCVD窒化物薄膜の性状の場所的変化の成因:3および4の結果より、膜厚および複素屈折率の場所的分布は、プラズマ状態の変化よりも下地金属の性質(結晶面方位など)の相違によって生じていると考えられる。
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