研究概要 |
高密度磁気記録の観点から新しい高飽和磁化軟磁性材料が求められている。この要請を満たすものとしては、現在のところFeまたはFe系合金しか考えられない。Feは元来軟磁性材料であり、このため薄膜でも比較的容易に高飽和磁束密度軟磁気特性が実現され、かつ種々のバリエ-ションを持つためにFe基結晶質材料に関する研究が著しく増加している。我々は、この鉄本来の軟磁気特性を引き出す手法として、結昌粒の超微畑化を位置付けた、以下の種々の手法を試み、高飽和磁化軟磁性材料を得ると同時にそのメカニズムについても検討した。 1.置換型非固溶元素M(M=Zr,Hf,Nb,Ta)添加による微細化と軟磁気特性 Feと原子半径差の大きな、いわゆる非晶質形成元素は非平衡結晶相状態に於いても結晶粒を著しく微細化する作用があると考えられ、Zr,HfやメタロイドがFe基bcc結晶相の微細化剤の有力な候補と考えられる。ところが、鉄と置換型元素は飽和磁化を急速に減少させると考えられていた。しかし、我々は5at%M程度までは単純なバンドモデルが成り立っていると見なせることを見いだした。さらに磁歪ゼロが実現する組成もあり、多層膜と同程度の特性が単層膜においても得られた。また、このような非平衡bcc相はメカニカルアロイングによっても得られ、同様な組成範囲で保磁力の低下がみられた。 2.前期遷移金属(M)とBとの複合添加と軟磁気特性ー非晶質相からの結晶化ーFeーMーB 液体急冷法では、FeーZr(またはHf)系で高Fe濃度領域で非晶質相が得られている。FeーMーB系に於いて非晶質相からの結晶化の際に微細化が起り1.7Tの高いBsを有する軟磁性材料が得られた。 3.イオンアシスト変調膜 Fe膜をイオンビ-ムスパッタ-法により作製中に適当なイオンアシストを変調することにより結晶粒とマイクロ組織の両者を同時に均一微細化し、良好な軟磁気特性が得られることを示した。
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