オ-ステナイト(γ)【double arrow】イプシロンマルテンザイト(ε)変態とそれに附随する力学的特性に大きな差異のみられる3種類の合金を昨年までの実験結果を基にして用意した。Feー24Mn、Feー24Mnー6Si、およびFeー26Mnー6Co合金を選び、逆変態γの性質と形状記憶について研究し下記のような結果が得られた。 (1)ε→γ逆変態挙動および逆変態γの性質について 24Mnと26Mnー6Co合金の逆変態γは強度が高く多くの転位を有することが見い出された。これらの逆変態転位は加熱によって消滅し難く、γ【double arrow】ε変態の繰り返しにともない増加する。一方、24Mnー6Si逆変態γの強度はSi固溶強化にもかかわらず前2合金より低く、変態の繰り返しに伴う増加量も小さい。24Mnー6Siでは変態転位の多くが可逆的に動くのに対して24Mnでは次々に転位が増殖しγが安定化してゆくことが推定できた。 (2)形状記憶現象について 試料をγ化処理した後、Af点近くの573Kまで冷却し、そこで数%の塑性ひずみを引張りで与え、そのときの外力を保ったまま室温まで冷却したところ、γ→ε変態により伸びが現れた。これは3合金に共通の現象で外力の助けにより優先的せん断によるγ→ε変態が起るためである。この試料を加熱すると24Mnー6Siでのみ大きな形状回復が認められ24Mnではわずかな回復しか現れなかった。24Mnー6Siに対して、さらに加熱冷却サイクルを施すと、先の外力方向に対して2方向の形状記憶が現れる。ただし、加熱上限温度依存性が大きく、高すぎると逆変態転位の再配列や合体消滅が進むようで、2方向記憶は消失する。このときの形状変化量は最初の回復量の数分の一に減少するが、これは異なるせん断が混入してくるためと推定された。
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