金属間化合物TiAlの化学量論組成(Tiー36mass%Al)を中心に、Al濃度と酸素濃度を変化させた試料を作成し、まず大気中での酸化特性を明らかにした。その結果、900℃および950℃で酸化させた場合、温度が高いほど酸化の程度は大きいが、Al濃度の高い試料は耐酸化性が良好となる傾向を示した。しかし、酸素濃度に関しては明らかな関係は見いだされなかった。次にこれらの試料に低酸素分圧下熱処理を施し、表面生成物の観察および耐酸化性改善効果を評価した。低酸素分圧下熱処理による耐酸化性改善効果の機構を探るためには、この処理によって試料表面にどのような層が形成されるかを知ることが重要である。この目的のため、処理の条件を変化させて生成層を観察した結果、表面には耐酸化性にすぐれたAl_2O_3のみの層が形成されていることが確認された。処理温度が低い場合あるいは処理時間が短い場合には表面層は薄く、また、処理温度が1000℃を超えるとAl_2O_3のみの層は形成されなくなることが明らかとなった。いずれの試料でも最表面にはごく薄いTiO_2層は観察されたが、この層は処理時間が長い場合でも厚さに変化が見られず、低酸素分圧下熱処理ではAl_2O_3のみが成長すると考えられる。このAl_2O_3層が厚く形成された試料ほどすぐれた耐酸化性を示した。また、Al濃度の高い試料では低酸素分圧下熱処理の効果は大きかったが、これは表面に形成されるAl_2O_3の量が多くなったためと推測される。しかし、表面層と金属との界面には酸素の濃化層も観察され、表面層の形成機構および耐酸化性改善効果が維持される時間はこの層の形成機構と関連があるとも考えられる。この点を解明する目的で酸素濃度の高い試料に対しても低酸素分圧下熱処理を施し、表面付近の詳細な観察およびこの処理による効果を検討する予定である。その結果から、低酸素分圧下熱処理による表面層の形成機構および耐酸化性改善機構を明らかにできると考えられる。
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