研究概要 |
Al濃度あるいは酵素濃度の異なるTiAlおよびTi_3Alに低酸素分圧下熱処理を施し,表面付近の生成物をX線解析によって詳細に調べ、大気中酸化の場合あるいはオ-ジェ分析結果などと比較検討した。その結果、低酸素分圧下熱処理およびやや低温(800℃)の大気中で酸化したTiAl試料で観測される回折線は,低酸素分圧下熱処理ではTiO_2は認められないのに対し、大気中ではこれが観測される点で異なるが、他の回折線はほぼ一致した。すなわち、低酸素分圧下熱処理と大気中酸化とは表面酸化皮膜の形成過程は異なるものの酸化皮膜形成後の内部酸化はほぼ同様におこると推測される。大気中では酸素分圧が高く、酸化の進行も早い。そのためTiO_2の成長速度は大きく、またTiAl中のAlの拡散速度が小さいのでAl_2O_3の連続した外部酸化皮膜は形成されない。一方、低酸素分圧下熱処理の場合、オ-ジェ分析の結果からTiAl試料表面にAl_2O_3とともに少量のTiO_2も生成されることが明らかとなったが、酸化物の成長速度は小さい。Al_2O_3の生成に伴って生じるAl欠乏領域はTi_3Alとなるが、この相は大気中酸化ではTiO_2を生成するのに対し低酸素分圧下では1000℃までの範囲では酸化物皮膜を形成せず、αーTiと同様に酸素を多量に固溶することが分かった。そのため以後の過程でもTiO_2は生成されず、Ti_3AlのAl濃度が高い場合には平衡解離圧が低く安定なAl_2O_3が生成され、Al_2O_3の連続した皮膜を形成するものと考えられる。この層を通してのイオンの拡散係数は小さいため、処理後の酸化に際して耐酸化性は大きく改善される。以上のように、低酸素分圧下では大気中酸化と異なり酸化物の成長速度が非常に小さいこと、平衡解離圧の低いAl_2O_3の方が生成されやすいこと、Ti_3Alは酸素を固溶するため酸化物を生成しにくいがAl濃度が高ければAl_2O_3を生成すると考えられることが低酸素分圧下熱処理でAl_2O_3のみの層が形成される理由としてあげられる。
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