研究概要 |
V-Ti基合金,(V_1-_XTi_X)_1-_yX_y(X=Al,Si,Cr,Fe,Co,Ni,Zr)3元合金の水素化特性および水素吸蔵・放出サイクルの影響と耐微粉化性について調べ,それらの諸特性を総合的に評価してヒートポンプ材用合金としての適用を検討した。その結果は次のように要約される。 1)最大水素吸蔵量は合金の価電子濃度(e/a)に関係し,この値が約5を越えると急激に低下する。これより第3元素の許容添加量を予測することができる。しかしAl,Siを含む合金はこの関係から大きなずれを示すことから,このような予測は添加元素が遷移金属に限られる。 2)γ水素化物生成・解離時のプラトー圧はCr,Fe,Co,Ni.Al,Siの添加により増大しZrの添加は低下する。解離圧の対数と合金の格子定数との間にはAlを含む合金を除き,格子定数の減少と共にプラトー圧は増大することから,適当な第3元素の添加によりプラトー圧を制御することができる。 3)水素化特性に及ぼす第3元素の影響を総合的に評価した結果,諸特性を改善する,あるいは劣化させないという条件をすべて満たす元素はみられなかったが,CrとZrの添加が最適であった。 4)V-Ti基合金は水素化サイクルの極く初期に亀裂の発生が認められたが,100サイクル以上では顕著な微粉化の進行はなく,他のLaNi_5,FeTi合金などに比較して優れた耐微粉化性を示した。 5)冷間圧延を施した薄板状試片は粒状試片よりヒステリシスが小さく,特にV-5at.%Ti合金で優れていた。 6)ヒートポンプ用合金としてV-5at.%Ti合金とV-15at.%Ti-5at.%Zr合金を組み合わせた場合,室温25℃で,廃熱温度が150℃の時は-5℃の冷熱が得られ,サイクル当たり約97Kcal/kgの優れた冷凍性能が期待できる。
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