研究概要 |
本研究は水銀を含むIIーVI族3元固溶体Hg_<1ーX> Cd(Zn)x TeにおけるXの全組成範囲にわたって,超均質なバルク単結晶を得ようとするもので,溶媒成長の一つであるTSM(Travelling Solvent Method)を基本に,新しい発想の下,成長過程で,成分元素の水銀とテルルの2つの活量を独立に制御している。原理的にはこの方法で組成Xは定まるはずであり,その効果を実験的に確めることを本研究の目的としている。本年度は成長用ソ-スに成分元素のCdTeを用い,まず所定の成長温度Tg=903Kの下で,水銀リザ-バ部温度Tresを種々変化させ(これによってTe溶媒中での水銀の活量を変化させる),それに伴う成長結晶の組成の変化を調べた。その結果,リザ-バ部温度(Tres)573K〜673Kの変化に対し,結晶組成はX=1のCdTeからX=0.60まで変化し,単結晶が得られた。X>0.80の範囲ではX=±0.01の範囲で均質なものが得られたが,X=0.60近傍では面内に偏析することが明らかになった。この理由はTe溶媒中での水銀の溶解量に関連すると思われ,その原因を考察中である。次に,水銀リザ-バ部温度を一定として,成長温度Tgを変化させたが(成長部温度の上昇はTe溶媒中へのCdTeの溶解度を変化させる。),その結果,Tg=840ー900Kの変化に対して,組成がX=0.7〜1.0のCdTeまで変化するのが知られた。以上の組成変化がLPEで知られているTe溶媒中での金属元素HgとCdのモル比に関係するかどうか検討した結果,LPEの場合に対応して変化しているのが知られた。その意味ではこの方法は連続LPEによるバルク成長とも考えられる。
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