研究概要 |
本研究はMCT(Hg_<1ーx> Cdx Te)の均一な組成をもつ単結晶を改良型THM(Travelling Heater Method)を用いて作製することにあるが,前年度までの研究において,組成x>0.65であれば,成長温度(CdTe feed部)と水銀リザ-バ部のそれぞれの温度制御によって単結晶成長可能であることが明らかとなっており,更にx>0.80ならx=±0.01の範囲で均一なものが得られることが明らかとなった。本年度はx<0.60において均一組合のできにくい原因の究明を試みたが,成長単結晶の成長方向に垂直な面内での偏析が著しく,成長管壁で組成xは高く一定で面中央で著しくxが下がることが知られた。従って,x<0.60を満たす成長条件下ではTe溶媒中でのCdとHg分布が不均一であることが予想される。次に得られた単結晶のフォト・ルミネッセンスを4.2Kで測定した。その結果,中性アクセプタ-に束縛された励起子の再結合による発光線がWuによって理論的に予測されたバンド・ギャップの組成依存性と一致することが見出され,xの高い組成域(x>0.80)のバンド・ギャップの変化が実験的にも確認された。一方,塩素をド-プしたMCT単結晶のフォト・ルミネッセンスも4.2Kで測定したが,その結果,長波長域(CdTeの場合,1.45eV)にあらわれるドナ-・アクセプタ-ピ-クがバンド端の励起子発光に代って顕著ななることが見出された。これは塩素がドナ-として作用し,Te溶媒からの成長でも形成されるアクセプタ-を補償したため生じた結果と考えられるが,結晶の批抵抗はそれ程高くないため,補償の程度は低いと思われる。以上のように今年度は成長結晶の物性評価を主として行い,MCT(Hg_<1ーx>CdxTe)のx>0.80において,バンド・ギャップの組成依存性,塩素ド-ピングの効果について知見を得た。
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