海洋開発に関連した重要な技術の一つに、海洋構造物の建造またはその修理のための水中溶接技術がある。特に、水深数十メ-トル以上数百メ-トルまでの大陸棚に相当する水深における溶接作業の必用性は近い将来増大すると考えられる。このような観点から、500mまでの水深における鋼板のア-ク溶接の可能性について実験的研究を行なった。その結果、100mを越える高圧下では、ア-クが著しく緊縮し、それがア-ク自身の不安定化および電極の消耗によるア-クの指向性の喪失を招き、結果として安定した溶接が行い難くなることを明かにした。そこで、この高圧下におけるア-ク軸方向磁場を適用し、本法がア-クの安定化に有効であることを見い出した。特に、交流磁場を用いることによって、比較的安定なア-クおよび良好な溶接結果が得られることを示した。さらに、20から500Hzまでの周波数を有する交流磁界を適用し、周波数の影響についても検討した。その結果、高周波数の磁界を用いると、コイルが誘導電流によって加熱し、また強磁界を得難くなるなどの問題が生じるため、実用上不利であること、低い周波数を用いた方が、溶接金属の結晶粒が微細化される傾向があり、有利であることを明かにしている。一方、高圧下におけるGTA溶接において問題となっている電極の消耗について検討を加え、従来用いられてきた2%トリア入りタングステン電極に加えて、イットリア、セリアおよびのランタナ入りタングステン電極について消耗特性を実験的に調べ、セリアおよびランタナ入り電極は消耗に優れており、高圧下のGTA溶接に適していることを明かにした。
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