研究概要 |
高圧雰囲気下で直接溶接を行ういわゆるハイパ-バリック溶接では,溶接ア-クが緊縮してその径が細くなり,その結果ア-クの指向性が失なわれて不安定となることが知られている。また,ア-クの電流密度が増大してその温度が上昇し,TIG溶接等の非消耗電極式溶接法においては,電極の消耗が問題となっていた。そこで,本研究では,ア-クの安定化を図るためにア-ク軸にほぼ平行な縦磁界を適用し,その効果について検討を加え,さらに,電極消耗現象の解明及びその抑制方法について検討した。得られた主たる結果は,以下のようにまとめられる。 (1)高圧下のTIGア-クに磁界を適用すると,ア-クの緊縮が緩和され,その径が増大する。その結果ア-クの揺動が抑制されてア-クが安定する。 (2)安定化のための磁界として交流磁界を用いると,その周波数に対応したア-ク電圧の振動が生ずるが,ア-クの安定化には効果を有する。また,溶接実験の結果,直流磁界を用いると溶接ビ-ドが左右非対となる傾向が認められたが,交流磁界を用いた場合は,左右対称な溶込みの均一な溶接が得られる。 (3)交流周波数が20〜500Hzの範囲内では,磁束密度が同一であれば,溶接結果に及ぼす周波数の影響は小さい。しかし,周波数が高いとコイルの過熱,磁界への変換効率の低下などの問題を生ずるため,比較的周波数の低い交流磁界を用いる方が実用上有利である。 (4)電極の消耗量は,雰囲気圧力の上界及び溶接電流の増大と共に著しく増大する。 (5)従来電極として用いられてきたトリウム入りダングステン電極に比べて,ランタナ入り電極の方が良好な消耗特性を有している。
|