フローインジェクション分析(FIA)における反応の高効率化を図る目的で、ラテックス粒子の表面に酵素を固定化し、これをキャリヤ-溶液中に懸濁させて用いる方法について検討した。スチレンとアクリル酸の共重合体の直径0.5μmの、サイズの揃った球状のラテックス粒子を合成し、カルボキシル基にアミノ基を導入の後、酵素を固定化した。得られた酵素固定化ラテックスの活性はラテックス合成時のアクリル酸の仕込みモル分率に応じて高くなった。その安定性は酵素の種類に依存したが、ラテックスに固定化した乳酸脱水素酵素は2ヶ月以上に渡って当初の50%以上の活性を保持した。種々の酵素固定化ラテックスをFIAに適用し、従来の酵素固定化反応管を用いるFIAに匹敵する結果を得たが、高濃度に分散させた場合には、光の散乱が生成物の検出の妨害となる。繰り返し使用するための回収の困難さとその効率の低さが最大の問題である。 マーカー分子を封入したリポソーム表面に固定化した抗原を流れ系の中で用いて、競合型の免疫測定を行なうフローインジェクションリポソームイムノアッセイ(FILIA)についても検討した。まず、酵素標識抗原を用いて、フローインジェクションエンザイムイムノアッセイを行なったが、シグモイド型の応答曲線が得られて、キャピラリー管に固定化された抗体が十分な免疫活性を有することが分かった。酵素標識抗原を結合させたリポソームもまた十分な活性を有することを確認したが、FILIAを試みたところ、免疫反応は確認されなかった。その理由として立体的な障害が考えられるので、親水性のポリマーをタンパク分子とリポソームあるいは反応管の間にスペーサーとして挿入することによって解決することにした。それによってシグモイド型の応答曲線が得られたが、ピーク高さの変化は小さく、問題を残した。
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