研究概要 |
前年度迄の検討から、フェニルアセトアルデヒド(PAA)とアミノ酸とによるシッフ塩基生成が、Aerosol OT(AOT)逆ミセル溶液により著しく加速されることを見出した。このことを利用し、アミノ酸のシッフ塩基生成とフェントン試薬によるフロー化学発光測定系を開発した。又、HPLC用検出系とする試みも行った。本年度は引続き、以下の検討を行った。 1.HPLCとの結合 ODSマイクロカラムを使い、移動相流量0.05ml/minとしてアミノ酸を分離したのち、逆ミセル溶液(0.2M PAA-0.5M AOT/ヘプタン)を2.4ml/minの流量で混合し、テフロン製反応管(内径0.5mm,長さ3m)の温度を75℃としてシッフ塩基を形成させる。その後、メタノール(3.0ml/min)を混合し、さらに10^<-2>M過酸化水素水溶液(1.2ml/min)、10^<-3>M Fe^<2+>溶液(1.2ml/min)を混合、発光検出する系を開発した。カラムをより細いものとするとさらに感度の向上が見られるものと考える。 本系により、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびヒスチジンの定量下限それぞれ14、1、34および62pmolという結果を得た。 2.シュウ酸ジエステル化学発光系における逆ミセルの有効性の検討 代表的シュウ酸ジエステルである2,4,6-(トリクロロフェニル)オキザレート(TCPO)と過酸化水素との反応でジオキセタンが生成しケイ光物質の存在で強く化学発光する。この系におけるAOT逆ミセルの有効性を確認した。すなわち、シュウ酸ジエステルが水に難溶で、しかも加水分解されるという問題点を解決できた。また、アセトニトリル溶媒中で発光させる場合と比較し、AOT逆ミセル溶液で行うと10倍以上の感度向上を見た。バッチ式化学発光測定装置とフローインジェクション化学発光測定装置の2種を製作し、過酸化水素定量に十分利用できる事を確認するとともに、反応機構に関する理論的考察も行った。
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