研究概要 |
平成3年度は主に、Nイオン注入による材料創製、改質の有用性を確認すること、及びカルコゲナイドガラスに対してAgイオンをフォトド-ピングにより注入し,被注入材料のキャラクタリゼ-ションを行うことを目的とした。 まず、Feの単結晶薄膜をスパッタ法により作製し、これに対してNイオン注入を試みた。注入条件を選択、吟味し、Fe_<16>N_2の単一相を作製することができた。この物質は通常の固相反応では得られないもので、イオン注入法の有用性が示された。ただし前年度に実施したカルコゲナイドガラスに対するNイオン注入が不可能であったことと考え併せると軽元素注入においては被注入材料の反応性が注入の可否に深く関与することが示唆された。 一方、フォトド-ピングによるAgイオンのカルコゲナイドガラスへの注入は再現性良く観察された。また、光学的性質、特に屈折率がAgイオン注入前後で大きく変化することに注目し、屈折率の空間分布を人為的に制御する試みを行なった。すなわち、適当なパタ-ンを施したマスクを介して光照射を行なったところ、光が照射された部位と照射されなかった部位に屈折率差を生ずることが確認された。 以上の結果は材料創製または材料設計に際し、イオン注入法が非常に有効であることを示すものと考えられ、カルコゲナイドガラスに限らず無機材料全般についてイオン注入を実施し、機能材料の創製に供することが重要であると考えられる。
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