研究概要 |
ダイヤモンドおよび立方晶窒化ホウ素(cBN)からなる複合焼結体は工具やヒ-トシンク基板への応用が期待される.本研究ではhBN粉末にダイヤモンド種子結晶を添加し,hBNからcBNへの誘発転移反応を利用する反応焼結法により,cBNマトリックス中にダイヤモンドが均一に分散した複合焼結体を作製することを目的としている.本年度は,最適処理条件における触媒効果と反応焼結機構の解明をおこない,次の成果を得た. 1)反応焼結における触媒効果と焼結条件の最適化:hBN粉末にダイヤモンド粉末を30wt%配合し,N_2+H_2気流中の雰囲気前処理試料にさらに0ー30wt%のNH_4NO_3,NH_4Cl,NH_2NH_2を触媒として添加し,7GPa,1700℃,30minの最適条件で高圧高温処理し,cBNーダイヤモンド複合焼結体を作製した.その結果,hBNからcBNへの転換率は,触媒無添加の場合には約50%であるが,NH_4NO_3を1ー10wt%添加することによって90%以上に向上することが明らかになった.しかし,30wt%以上の添加では触媒中の酸素量の増加により転換率は著しく減少した.また,NH_4Clを触媒に用いた場合には,1wt%の触媒添加で転換率はすでに98%に達し,相対密度99%の緻密な焼結体となるが,30wt%添加試料ではNH_4Clが残存し焼結性が低下した.さらに,NH_2NH_2を触媒とした場合には,添加量1ー10wt%で転換率は100%となり,cBNとダイヤモンド以外の異相は析出していなかった.これらの焼結体の微小硬度はいずれもHv≧5100kg/mm^2の高い値を示した. 2)揮発性触媒による反応焼結機構:上記の各揮発性触媒を用いて,処理温度と一定の転換率に達するのに必要な反応時間との関係を調べた結果,cBNへの転換に要する活性化エネルギ-は,200ー230kJ/molの範囲であり,触媒無添加の場合の630ー1050KJ/molに比べてかなり小さかった.このことから,高温高圧下で分解生成した触媒中のNHx成分がhBNからcBNへの転換に必要な結合の切断・再結合に寄与しているものと考えられた.
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