灰重石型構造をもつCaWO_4、PbWO_4、BaWO_4などの酸化物を母体とした各種焼結体についてX線回析を行ったところ、Pb_<1ーx>La_xWO_<4+x/2>組成の焼結体においては広い組成領域にわたって母体と同じ結晶構造の固溶体を形成することがわかった。この場合母体であるPbWO_4は、900℃で1.2×10^<ー4>Scm^<ー1>程度の低い導電率しか示さないが、Pbの一部をLaで置換したものは、著しく導電性が向上し、ほぼLaの固溶限であるx=0.30において最も高い導電率(800℃で2.4×10^<ー2>Scm^<ー1>)を示すことがわかった。この値は8m/oYSZの酸化物イオン導電体より若干高いものであった。xを0.40とすると、第2相が現れると共に導電率は低下した。Laの代わりにYなどを添加した焼結体についても同様な測定をしたが、導電率は1桁以上低いものであった。次に代表的な試料について導電種の検討を行った。まず600℃〜900℃で酸素ガス濃淡電池(1気圧酸素と空気を使用)の起電力を測定したところ、各温度でほぼ理論値に近い値が安定に得られた。また、同じ電池を放電させたところ試料の交流低抗にほぼ見合う電流を安定に取り出すことができ、導電が可逆的な電極反応が可能な酸化物イオンによって行われていることが明らかとなった。 さらに、調製した試料の組成(Pb_<1ーx>La_xWO_<4+x/2>)から考えると、Laの置換によって格子間酸化物イオンが生成する可能性があることになる。これを確かめるために試料の粉末密度の測定を行った。この結果を精密X線回折により求めた格子定数を使って種々の仮定の下に計算した値と比較したところ、実測密度は、Laの置換固溶にともない格子中に過剰酸化物イオンが生成すると考えた計算密度とほぼ一致した。このことは、この系においては格子間酸化物イオンが存在しこれらが拡散することにより高い酸化物イオン導電性が現れることを示すものと考えられた。
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