研究概要 |
本研究は超音波噴霧器と加熱反応炉を用いた噴霧熱分解法により単一層ならびに異種相が複層した構造のセラミックス微粒子の合成を試みている。本年度は主として単一相の合成条件と特性との関連を検討した。 1.アパタイト系 酢酸カルシウムまたは乳酸カルシウム,EDTAおよびリン酸二水素アンモニウムをCa/P=5/3(モル比)となるように混合した試料溶液を400〜1000℃に保った縦型電気炉中で噴霧熱分解した。生成した微粒子の粒度分布の中心は0.6μmであった。また生成粒子は噴霧時にはいずれのCa源の場合もアモルファスであったが,炉温1000℃でアパタイト生成濃度が0.005mol/1の溶液からは,酢酸塩を原料とする場合にはアパタイトがわずかに見られたが,乳酸塩を原料とする場合は比較的結晶性よくアパタイトが析出した。一方,酢酸塩を原料とし生成濃度が0.0075〜0.01mol/1であるときの粒子はコンペイトウ状であり,400℃で再加熱すると焼結した。その他の場合は滑らかな表面を持つ中空状〜緻密な粒子が得られ,乳酸塩を原料とすると緻密な粒子が得られた。 2.酸化鉄系 硝酸第二鉄水溶液およびエタノ-ルならびにグリセリンをそれぞれ20vol%含む溶液を噴霧熱分解した。アルコ-ル無添加およびエタノ-ル系では表面の滑らかな厚い殻の球状粒子が得られ,600℃以上で再加熱するとアモルファス状態からヘマタイトへ変化し,800℃以上では粒子同士の焼結が観察された。粒度は0.2〜0.6μmの範囲にその80%以上が存在し中心は0.4μmで,アパタイト系よりやや小さい粒子が得られている。グリセリン系や添加物としてEDTAを含む溶液からは表面の粗な粒子が得られた。酸化スズ系についてもほぼ同様な結果が得られている。現在は,酸化鉄ーアパタイト系について原料の選択を含め複層構造粒子の合成についての検討を行っている。
|