研究概要 |
本研究は,核ー殻複層構造を有する微粒子を,金属化合物溶液の超音波噴霧熱分解法により作製することを目的としている。昨年度のアパタイトおよびヘマタイト単一相微粒子の成果を基に,本年度はそれらの核ー殻複合化を試みた。 実験 Ca:Pのモル比が5:3となるよう乳酸カルシウムおよびリン酸二水素アンモニウムならびにEDTAを含む水酸アパタイト(HApで0.01mol/l)系水溶液を調製した。これと,別途調製した硝酸鉄(II)(ヘマタイトで0.09mol/l)水溶液とHAp:ヘマタイト=1:9〜1:0.5となるように混合し,噴霧溶液とした。酸素ガス気流(4l/mol)により900℃に保った縦型炉内に導き熱分解させ,さらに補集粉体を大気中<1000℃で再加熱処理した。 結果と考察 噴霧直後の生成粉体はいずれもアモルファスであるが,再加熱するとHAp/ヘマタイトが析出した。噴霧粒子の粒径は,混合比により0.4ー0.5μmを中心とする0.2ー0.9μmの範囲に分布している。また,SEM観察から,0.8μm程度のやや大きめの粒子においてのみ二層構造が見られた。この核ー殻複層構造は次のような機構で生成するものと結論した。すなわち,HAp/ヘマタイト混合溶液の液滴が炉内で外側から内部に向かって加熱されると,最も弱いカルシウムイオンとEDTA間のキレ-ト結合がまずはじめに破壊され,直ちにHApの沈澱粒子層が液滴表面に形成される。大きめの粒子では中心と表面との温度差が比較的大きいことから,HApとヘマタイトとは一定の時間おいて析出するために傾斜分布の鋭い二層構造が得られが,小さい粒子ではその温度差が小さいため,組成の傾斜度は緩やかで核ー殻構造が認められないが,炉内での加熱時において表面と内部の収縮の歪みのため,表面のへこみや割れが観察された。
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