1.研究目的 溶融酸化物は、メタンの酸化的変換反応で発生する大きな反応熱を速やかに分散できるので、温度制御が容易になるとともに完全酸化を抑制し、しかも、酸化物構成酸素による反応のため、高い生成物選択性が期待できる。そこで本研究では、溶融状の混合酸化物を用いてメタンの酸化反応を行い、生成物の選択率の向上を図るとともに、その作用機構を明らかにすることを目的とする。 2.研究成果 反応は、750℃の共融混合酸化物(Bi_2O_3ーV_2O_5、Bi_2O_3ーMoO_3、CuOーMoO_3)中に、ヘリウムで希釈したメタンを細かい気泡として分散させる方法で行い、生成物をガスクロマトグラフで分析した。BiO_2O_3ーV_2O_5やBi_2O_3ーMoO_3を用いた場合には、ガスとの接触時間が数秒程度と短いにもかかわらず酸化が充分進み、COやCO_2が主生成物となった。X線回折結果より、酸化物中のBi_2O_3の一部はメタンにより金属Biまで還元されることが分かった。一方、CuOーMoO_3を用いた場合には、メタン転化率は数%ではあったが、エタンやエチレンが主生成物として得られた。この系でも、CuOの一部は金属Cuに還元されたことより、メタンはCuOと反応してC_2生成物とCuとを与えることが示唆された。この系は前記のBi系に比べて粘度が小さいため、気液の接触時間がより短いのでC_2生成物選択率が高くなったことも考えられる。 今後は、さらに高い転化率やC_2選択率を与える共融酸化物系の開発、同一の接触時間を与えるボ-ト型反応器での溶融酸化物間の反応活性の比較が課題である。
|