研究概要 |
リン脂質ベシクルに新機能を付与するための機能性物質として,溶液中でアルカリ金属イオンやアルカリI類金属イオンと選択的に錯形成する長鎖クラウンエ-テルを用い,これを各種リン脂質に混入した混合ベシクルを調製し,リン脂質とクラウンエ-テルの機能の複合効果について検討し,次のような結果を得た。 1.PCーPSークラウンエ-テル混合ベシクルとPCーPS混合系のKCl濃度によるζー電位変化を比較すると,PCーPS混合系ではPSを混合させた効果はほとんど見られないが,PCーPSクラウンエ-テル混合系ではクラウンエ-テル量は一定にもかかわらず,ζー電位のKCl濃度による大きな変化が認められた。即ち,クラウンエ-テルを混合した場合に限り,PS含有量が増大するとK^+濃度,増大と共にζー電位は負側へ大きくシフトした。この様な傾向は錯形成能の高い金属イオンを添加した場合にだけ現れ,クラウンエ-テルの錯形成がこの現象に関与していることが解った。 2.各種アミノ酸を添加した際のベシクルへの吸着性,ζー電位変化及び分散凝集性を調べることにより,アミノ酸の静電気効果の他に,加えるアミノ酸の炭化水素鎖長の影響を調べることより,微粒子の安定性に対する疎水性効果を明確にすることができる。例えばPC単独ベシクルにアラニン及びグルタミン酸を添加すると両方ともζー電位はpH5を境に正から負へなだらかに変化する。一方PCにクラウンエ-テルを混合したベシクルにアラニンを添加しても同様の傾向が認められるが,混合ベシクルにグルタミン酸を添加すると,いずれのpHでもベシクルはほぼ一定の正電位を示すことが解った。これはアラニン分子は親水的過ぎてベシクル表面に吸着しにくいが,炭素数5個のグルタミン酸はベシクルへの親和性があり,その第一級アンモニウムイオンがクラウン環と選択的に錯形成しているためと思われる。
|